エビストについて書きます

8 beat story♪と8/planet!!+2_wEi

容赦なく主人公の逃げ道を潰すエビスト第11章、読んだ?

A.めちゃめちゃおもしろかった〜。

 

再読したのでどんな話だったかまとめます。第12章についてもたぶん書きます。

 

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11章と第12章は桜木ひなた編としてセットになっているんですが、第11章は彼女がチームの中にいる理由・意味を見失っていく話です。

ひなた自身の苦しみは作品設定の根幹であるライブバトルの仕組みから来ていることが読み進めていく中で分かるのですが、そこに焦点を当てていくシナリオの手際というか、彼女がライブバトルに立てない他の理由、逃げ道の潰し方に容赦がない。

仲間に認められている、自信を持てたからという理由でチームに戻るという線が消されて、彼女自身の意思の問題として解決しないと戻れないのが明確になっていくのです。

仲間はみんな優しいしひなたもみんなが大好きなのにチームにいられない状況がロジカルに組み立てられていく。読んでいてめちゃめちゃ辛い。

 

 

主人公にありがちなキャラクター造形、からの

10章で虎牙アルミが発した問い(才能に溢れたメンバーが揃っているチームの中に、何も持っていないひなたが何故いられるのか)は彼女が悩みはじめるひとつのきっかけになります。

目立った才能を持たないキャラクターが劣等感に苛まれる話はアイドルものに限らず見られるものだと思いますが、桜木ひなたの場合、この問いが現れる前に実は回答は出ています。

つまり心の底から音楽が大好きで、楽しんで歌うことで人の心を動かすことができるということです。

 

その能力はメインストーリーの中で描写されています。5-2『昔のおはなし5』では勝てるチーム集めに焦る彩芽が偶然彼女の歌を聴いて音楽を楽しむことが一番大事だということに立ち返る一幕があり、後日それがチーム加入のきっかけになるのです。

11章の中ではひなたを勧誘した理由を彩芽がはっきり伝えますし、他のメンバーもひなたに信頼を置いていることがわかります。

チームの中の光だと杏梨は語りますが、ひなたという名付けはまさしくそういう意味がありそうですね。

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10章が公開された時点で、我々ユーザーも、ストーリーや楽曲あるいはライブを通して桜木ひなたの特別な能力を理解していたと思います。なので次章の着地点もおおよそ目処はつけていたのではないでしょうか。

しかしそれはある意味ミスリードで、作品のもっと深い場所に踏み込んできたのがこの第11章になりました。

 

 

アイドルオーディション

ひなたの幼い頃からの夢:アイドルになることをここで持ち出すことで、ライブバトルは彼女が本来やりたかったことではないのが明らかになってしまいます。

5-11『昔のおはなし7』は鈴音がひなたを紹介するシーン。歌う場所を持たなかったひなたにとって渡りに船で、その時はライブバトルが何かを知らず(参戦という言葉に少し引っかかりを覚えながら)喜んでチームに加入することになります。

歌って踊ることそのものはアイドルと同じで、メンバーにも認められて楽しい。

しかし時間が経つにつれてその仕組み(勝敗を決め、敗北を続ければBANされる)に疑問を持ち、心の中にモヤモヤが溜まってきたというのがこの章の内容です。

 

第10章では2_wEiのパフォーマンスにひなたが感動してそれを2人に伝えるも、敵同士なのに馴れ馴れしい、平和ボケだとミントに返されていますね。空乃かなでとの交流・別れもあって、アンドロイドの音楽も関係なく好きだという言葉に重みが出てきました(我々ユーザーも一緒に彼らに触れてきたのがこの1年強でもあります)。

遡れば、ひなたは第1回リーディングイベントの劇中で既にライブバトルで勝敗を決めることに戸惑いを覚え、バトルでチームを引っ張る役割を与えられて悩んでいます。

 

ひなたはオーディションの最終審査で落選し、再びこのライブバトル問題に大きく直面します。つまり、戦いたくない。

音楽が大好きであるがゆえにMotherによる音楽の選別であるライブバトルという仕組みに疑問を持ってしまう。チームに自分の力が必要とされているのは理解していても、その気持ちのまま参加すればチームに迷惑をかけてしまう。

ならばチームにいられないのではないか。

彩芽や杏梨はひなたのこの部分をしっかり理解していて、彼女をライブバトルの場に置くことで苦しめているのかもしれないと気付いています。だから彼女を引き止めることができない。

桜木ひなたの「音楽が大好き」というキャラクター造形とライブバトルという舞台設定が重なりながら、脱退が避けられない状況になっていく。恐ろしいです。

 

 

水瀬鈴音

ひなたがチームに入れるように彩芽に紹介したのは鈴音でした。

鈴音は1年時から勧誘されていましたが、引っ込み思案で集団の中に入っていけないことから加入を断っていました。2年時にひなたと一緒ならばと加入します。

ひな鈴は昔からの幼馴染で、明るいひなたが内向的な鈴音とよく遊んでいる、支えてやっているという関係があり、加入のエピソードもそれを受けたものになっています。

ひなたの中にも鈴音を支えてあげたいという意識、関係性に対する自覚があったのでしょう。

 

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先生とメイの深刻げな会話を聞いた鈴音は彼らについていき、2_wEiに対抗するためにゆきなのTV番組にピアノ演奏で出演することに決めます。

主に第7章を経てチームの力になる、人前に出ることができるようになった、彼女の自立を示すエピソードです。それを見たひなたは、もはや鈴音は自分の助けを必要としていないことに気づきます。

これで鈴音の支えとしてチームに残るという意味がなくなってしまった。

 

皆が認めてくれる、能力に自信が持てた、鈴音が必要としている、そういう理由でチームに残るという筋はもうありません。

音楽は本来楽しいものなのに、なぜライブバトルは勝敗を決め、選別し、自由を奪うのか。その仕組みの中で歌いたくない。残ったのはそういう疑問・拒否感です。この問題を解決しなければひなたは再びステージに立つことができず、ストーリーとして納得のいく着地は望めません。

例えばメイが素性を明かしてでも強く説得したところで、彼女自身が克服しなければ意味がないのです。逃げ道の潰し方が周到。ひでえよ。

 

さて、良かれと思って歌う場所を紹介したことが今は戦いの場所に誘ったことに意味が変わり、それがひなたを苦しめる結果になっている。

ひなたはそんなことを思いたくないし皆のことが大好きなのに、誘われなければよかったと思ってしまう。ライブバトルの世界に身を置かず、純粋にアイドルを目指せばよかった。そんな心の在り方が鈴音を傷つけてしまった。

大好きな鈴音を傷つける言葉ならばいらないと思ったひなたは声を失ってしまいます。

 

雑感

出てくるのは優しい人物ばかりで、アルミとミントも揺さぶりこそすれひなたに投げた疑問はただ興味から出たもののように見え、なのにこんな展開になっていることに慄きます。皆が優しいからこそ、この追い詰められた状況が余計に悲しいと思わされるのでしょう。

11章が公開された後、桜木ひなたのソロ曲『Teardrop』が公開、第12章公開と進んだわけですが、それを待っている間の退路がない感じは凄かった。

 

8人でライブバトルができなければきっと未来はないし、そうなれば8人の夢も叶わなくなってしまう。しかしひなたがどうやってチームに戻るのか、その道筋も見当がつかなかった。

このストーリーはPvP型のイベント:対戦LIVE BATTLEの開催中に投下されました。君たちは無邪気にイベントやって対戦してるけどひなたはそのライブバトルでこれだけ苦しんでるよ、というのを突き付ける意味があります。運営、良い性格してるぜ!

ということをリアルタイムで追っていた感想として書き残しておきます。

 

 

気になる伏線めいたものは、感情豊かな現在最先端のアンドロイド:Type_Zと未来からやってきた感情の薄いメイというギャップに先生が疑問を持つシーンです (11-5)。

どこかでMotherの考えが変わったのか?と彼は考えます。かなでの敗北と第12章で起きる2_wEiの試合放棄という失敗を経て、感情を持たない新型のアンドロイドを戦線に投入する可能性は高いと思います。

 

Special Movie、気になりますね。Motherは純粋に音楽の発展や進化を追求している科学者型のAIなのかなとイメージしていますが、この映像からだと明らかに深刻なエラーを抱えているように見えます。

まだまだ謎しかないので、次のストーリー更新で何が明かされるか楽しみです。

 

 

そしてこの世界観の音楽を取り巻く状況について。

いくらMotherが音楽産業(どの程度支配しているか明瞭ではないが、あえて産業と限定して言います)を支配しているといっても人間の生活に音楽は必要不可欠だし、根っこの部分で音楽をやる人間は絶えないだろうと思っていたのですが。

AI/アンドロイドが人間の仕事や居場所を奪うことで、音楽に夢を見られなくなって文化として大きく衰退する未来はあり得る話だなと思うようになりました。

ライブバトルで圧倒され、人間がやることじゃない(音楽やるなんてダセーよな)とか生業として生活していくのが難しいということになり、全部AIに外注化してしまった結果がメイが来た元の未来に繋がっていくのかもしれません。

そしてひなた達8人が音楽の未来を救うためにも、ライブバトルという土俵で勝たなければならないのでしょう。

 

第12章を終えて、8人それぞれのストーリーが終わりました。メイのソロ曲が残されていますけれどね。ん、8人…?

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じゃ、次はシグマ(ワイリー)ステージだな!