エビストについて書きます

8 beat story♪と8/planet!!+2_wEi

君は2031年を体感したか。2_wEi 1st Live "Driven to Despair" 感想

2031年に行ってきたよというレポート。最高。

 

完全にミントが言うところの「人間の皆さん」にされてしまった 

 

 

 

コンテンツ・キャラクターのライブとして貫かれたコンセプト

今回のライブを一行で振り返るとそういう言い方になる。概ねの予想通り野村麻衣子・森下来奈の2人が2_wei:アルミ・ミントそのものだというスタンスを貫き、歌い演じきった。そのための演出も徹底しており、1部につき1時間と短い公演の中に8 beat story♪の作品性が凝縮されていた。

演出面の工夫が随所に見られ、コンテンツ型のライブとしての完成度が異常だったということで音楽よりもそっちを中心に思ったことを書いていく。

 

これまでのお膳立て

2_wEiは現状2年半続いているエビストで今年登場したばかりのユニット。それまでのエビストにはなかった非常に重いストーリーと『Despair』『UNPLUG』の2曲をひっさげて4th Liveに乱入、というあたりの話は過去の記事を読んでみてほしい。

今回についてもライブを前にして2人のストーリーが追加され、ゲームとライブの連動した展開が4th Liveに続いて示唆された。

nozzey19.hatenablog.com

 

nozzey19.hatenablog.com

 

ところでエビストは人工知能が制作する音楽が人間製の音楽を追いやりつつある2031年を舞台にしており、プレイヤーはバーチャル空間で架空の存在のアンドロイドとライブバトルをすることになっている。

バーチャルな存在でしかなかったアンドロイドだが2_wEiは現実空間に肉体を持った存在として生み出され、人間と同じようにテレビに出たりライブをしたりと猛威を振るっている。

つまり元々肉体を持たなかったものがリアルの体を持って現れる(ゲーム中)、架空のキャラクターがゲームから飛び出し担当声優の体を借りてライブをする(この現実世界)という2つが重なり合っているのが2_wEiというユニットだ。現在の2018年とエビストの舞台である2031年を交錯させる、凝った入れ子構造だ。

これを利用しながらキャラクターを演じきるステージを作り、ライブハウスにエビストの世界を召喚することが今回のひとつのコンセプトだったように思う。それはライブであってひとつのアトラクションのようでもある。本当に楽しかった。

開演前後のアナウンス

開演前に諸注意が読み上げられる。これが8/pLanet!!のライブならキャラクター声のアナウンスが入るところだが、まあ2_wEiはやるキャラじゃないし普通に会場の人がアナウンスしてるんだろうと思っていたら早くも仕掛けられている。

通常の諸注意に続き、ステージの両脇に立っている男性(ガタイがいい)がSotFインダストリーアンドロイドの親玉である「Mother」を所有し2_wEiを生産した企業のセキュリティで、あんまりマナーを守らないと彼らが締め出しに来るというアナウンス。なんてこった、もうここは2031年だ。そういえばこの音声自体もややノイズ混じりになっている。 

続いて2_wEiの原型となるボーカルソフトの生みの親虎牙優衣(CV:芹澤優)が会場に呼びかけてくる。2_wEiのストーリーの重要人物だ。彼女は劇中で既に亡き人となっている。僅かに残された人格データがサイバー空間を彷徨い、会場にハッキングでも仕掛けているとでもいうのか。

2人を破棄せざるを得ず親としての役割を果たせないまま逝ってしまった自責の念が語られる。そして、深い絶望の中にいる2人の歌を受け止め、2人を愛してほしいと言う。それが何かが変わるきっかけになるかもしれないと。

ゲーム中のストーリーの続きを見せるようなモノローグ。確認するがこれは開演前だ。かなりかっ飛ばしていると思う。しかし、話は知らない、読んでないけどとりあえず来たという人も何かを察したのではないか。

そんな訳でアルバム『Throne of Despair』のイントロが流れ、ステージ上にアルミとミントが登場する。

ところでハニプラ3rd 4thはバーチャル空間にダイブする映像演出があったが、今回はそれがなく、やはりこれまでとは違って現実空間で行うライブですという設定が反映されているのでは。

 

ライブ本編

ストーリーで触れられていたバンドセットは無し!しかし、夜の部終演の際に"Driven to Despair Final"と称してバンドセットを入れたライブ開催が告知された。ちなみにバンドメンバー(Dr:青山英樹 Ba:二家本亮介 Gt:山本陽介)もSotFインダストリーから派遣されるという設定になっていた。

 引退は撤回します

 
楽曲とパフォーマンス

『Despair』『UNPLUG』から始まってゲーム内発表順に5曲を披露、その後アルバム新曲を5曲。まだそう多くはない(といっても始動から1年だ)持ち曲を全て見せる約1時間のステージとなった。

8/pLanet!!と比べると2_wEiの振り付けは多くない。がっつり踊るよりもとにかく歌い上げるという見せ方になっている。しかし大きな身振り手振りや表情が確実に2_wEiの感情の激しさを表現している。観客を睨みつけ、煽り、時折悲痛な部分が顔を出す。

声優・野村麻衣子と森下来奈が入り込む余地は排除され、ストーリーの地続きとしてアルミとミントがステージに立っていることが頭ではなく感覚で理解できた。ステージ上の2人にはただならぬ説得力があった。

 

MC

2_wEiの全てを見せてやるからお前らも全力で来いという話だったり、危ないから前に寄せるなとか、グッズ紹介とか、お弁当の話。アドリブ的な部分もあっただろうが全部アルミ・ミントのままでやりきった。ちょっとした舞台演劇みたいだ。

終盤、『Numb』の前に悲しげなピアノインストをバックに長めのMC。やり残していることはないか。先延ばしにしているうちに大切な何かが大きく変わってしまうかもしれない。伝えたい想いは今伝えろ、会いたい人に今会いに行け。今を全力で生きろ、2_wEiもそうする。

これがもっと「声優ライブ」然としたイベントだったら印象は大きく違っていただろうと思う。

しかしここは今2031年で、ステージに立っているのは絶望と後悔のドラマを(しかも、現在進行形で)抱えた2体のアンドロイドなのだと思わせるように全てが機能していて、キャラクターを通して歌われる歌と言葉に重みが与えられていた。

最後は2人に残された「歌」への戸惑い混じりの愛を綴った疾走感ある楽曲『Pain - pain』を披露し(ちょっと泣いた)、あっさりと退場していく。

アンコールはなく、夜の部では上述のFinalの告知があって終演となる。

 

 

総括

・開演前からエビストの世界観を構築し、ライブ中はキャラクターがステージに立っているという前提を一切崩さない

・ライブが現在進行中のストーリーでの出来事として位置付けられている

・歌によって想いを伝えるというエビストのメインテーマ(それをキャラになりきって実践できる野村・森下のパフォーマンス力)

 

1公演約1時間と短いながらも非常に濃密で充実したイベントに感じられたのはだいたいこんな風に整理できるだろうか。

観客を2031年の人間、2_wEiの物語の目撃者にしてしまう力を持ったイベントだった。はっきり言うとエビスト史上最高だったかもしれない。

今後も物語と音楽が一体となった方向性でエビストは進んでいくのだろうし、8/pLanet!!にしても2_wEiの存在を踏まえてシリアスに歌と向き合ったものになっていくのかなと想像している。

 

ライブに行ったフォロワーからは特撮ヒーローショーみたいだったという感想も聞かれた。「2人の想いを受け止めてほしい」というアナウンスはなんならプリキュア映画で観客にライトを振るよう呼びかけるシーンを思い出した(実際ペンライトが振られている)

あるいは徹底してフィクションの世界を作り上げようとしている点でディズニーランド的なものを志向しているのかなと思ったりもする。ディズニーランド、修学旅行の1回しか行ったことないけど。女性声優じゃないから

 

  

その他感想 

感情もそれを表現する力も、その人が生きてきたその人だけの文脈も持っているとなると、2_wEiは完全に人間を食いに来てるユニットだなと思わされる。

空乃かなで編で意外にもあっさりと感情・自意識を持った(と思われる)アンドロイドが出てきてやや戸惑ったが完全に腑に落ちた。こんなんが出てきたら「じゃあもう歌う必要なんかないな」と思うのも全く無理はないからだ。

こうモロに機械と人間の境界がなくなってしまうSFってそんなに読んでない(読書体験が少ない)。『BEATLESSとか『戦闘妖精雪風』は完全に異質であることが前提だし。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は相当前に読んだきりで全く覚えてないけど人間の感情というアイデンティティの危機感でいうと近い気がする。

とはいえエビストは歌が最大のテーマのはずなので、桜木ひなた達がどう向き合って良い未来を切り開いていくのかを楽しみたい。

 

2人のジャケットの背中。デザインというよりマンガのように見えたけど内容までは読み取れない。

レーザーとかライトの演出。Numbの雨描写が曲と歌も相まってエモの2乗だった。

ミンちゃんの人間に対する優しさは少しながらも虎牙優衣ちゃんの愛を知っているからなのかな…

2034年から2031年にタイムスリップしてきた人結構いた。私も1stではそうでしたね。

バンドの前で声優やアイドルが歌うと最高というのがこの1年で得た経験なのでFinalへの期待感は高いし、これがあと4公演あることも嬉しい。

 

 

追記 大阪公演・東京Final公演について

単独の記事にするほどでもないので思い出しとメモをいくつか。

  • 12月大阪。8/pLanet!!よりも先に大阪でのライブイベントが開催されたことに驚いたが、2人体制という身軽さが実現させた部分もあるか。
  • アナウンス含む構成は11月と同じだが、MCに遊び心が見られる変更点があった。やはりアルミがミントの子供っぽい部分をバラす(新幹線を楽しむ様子、「イメージカラーだからグリーン車がよかった」)。関西弁でしゃべる。
  • Numb直前のMCも年末仕様。

  • 最前で見たところ2人とも脚が大変綺麗だった。
  • 後日、ミント・森下さん着用のコーチジャケットを買った。

 

  • 3月東京Final。生バンドということでバンメン推しのファンも来ていたのだろうか。
  • 出音のバランスがボーカルが埋もれずバンドもしっかり主張しており大変よかった気がする。
  • 虎牙優衣のナレーションがないことについて。ストーリーの更新時とそれぞれのライブ開催時で時系列が前後しているのかもしれないし、していないのかもしれない(幽霊のように漂っていたデータが3月には完全に消えた?)。
  • ただ4公演参加した後にナレーションがないのを見ると「なんかライブが始まった気がしない」「あるはずのものがない」感じがある。気付いたのは数日経ってからだが、彼女がもういないという喪失感や違和感を3回6公演の中で体験することになった。
  • 昼公演。大まかには先だっての東京・大阪公演と同じ。バンドのソロ回しと初披露Heroicが挿まれ、NumbのMCが削られた。
  • バンドメンバーもキャラクター化されるということは物語の登場人物であるということ。2031年の作り込みだ。
  • 序盤、アルミ・野村さんが噛んで勢いでやり通す場面があった。苦笑いが出ていたがそんなキャラクターの生っぽさは面白いと思う。

 

  • 夜公演。演出・セトリに大幅な変更。諸注意のアナウンスの際、SotFセキュリティ(いかつい)がステージ上に上がる(盛り上がる観客)。フロアに飛び降りて地面が揺れる(盛り上がる観客)。初の演出。
  • 初手Heroicで単なる昼の再演ではないとわかる。
  • BD化、11月に2ndワンマン開催発表。
  • 「2_wEiはいろんなものを失い奪われてきたけれど、絶対に奪われたくないものがある」「辛いことがあれば下を向いてもいい。後悔していることがあるなら振り返ればいい。でも、2_wEiの音楽を聴いている時だけは前を向かせてやる」
  • かっこよすぎる…
  • キャラクター、虚構であることをステージ上で貫くからこそ言葉に強度が出るし、それに説得力を持たせられるライブでもあった。
  • マイナスの感情を(単発の楽曲ではなく)ユニットの根幹に据える難しさがこの手のジャンルのものにはあると思うが2_wEiはひとつの鮮やかな回答を見せているのではないか。
  • UNPLUGで完全に突入してしまった。「消えない痛みも解き放てばいい」
  • 初のアンコール成立(Be alive、Despairの2曲)
  • アンコール後「野村麻衣子」と「森下来奈」が登場。「アルミさんとミントさんはもう帰っちゃった」。「1stライブを通してアルミ・ミントにも希望の光が見えたのではないか」「エビストはファンと一緒に作っていけるコンテンツです、これからもよろしくお願いします」と挨拶。
  • 物販のお姉さんにしっかり「2_wEi旅(ちゃび)1枚ください」と伝えられてよかったです。