信じ合う仲間とレッツゴー エビスト第12章
第11章では桜木ひなたがチームにいるべき理由を失っていく過程が描かれました。第12章は再起のストーリー。ひなたの復活と同時に、メンバー8人が無二のチームであることが話の中心に置かれています。
ひなた不在の中で2_wEiとの対戦を控えるメンバーに少しずつスポットを当てつつ、8/pLanet!!の名が付けられ、彼女たちの音楽が未来への可能性を見せる終盤に向かっていきます。
再読してみるとこの、8/pLanet!!というチームの在り方の部分がとても良かったので、その辺をまとめた感想文ということでお願いします。
7人
ひなたの声が出なくなり、更に寮から出て行ったことでメンバーは動揺します。彼女がいない練習の空気はどこかおかしくパフォーマンスも上がらない。前章で言及されたように、ひなたがチームに与えるポジティブな影響が、戦力としても重要だったことが分かります。
2_wEiとの対戦を控えながら最大のピンチですが、その中でメンバーが見せる振る舞いがみんな優しくて健気で泣けちゃうんだよな。。。
彩芽・杏梨
彩芽は寮を出て行こうとするひなたを呼び止めて、「バトルをやめても居場所はここにある」「何があっても私達はあなたの味方」と伝え、杏梨はひなたと同様にチームを辞めようとしたことを重ね、先輩らしい優しさを見せます。
杏梨が辞めようとした理由はひなたとは似ているようで違うのですが、自分はチームにいたい、仲間が必要なんだと気付いて戻ってきたと語ります。彩芽もやはり仲間を、ただ戦力として捉える以上に大切に思っている。
ライブバトルで苦しむひなたの気持ちに寄り添い、たとえチームに戻ってこなくてもひなたがまた楽しそうに歌えるように願うところは良いですよね。ひなたの歌声に惹かれたファンでもあり、ライブバトルのために集まったとしてもそれだけで繋がっているわけではないという。
ひなたをバトルに巻き込んだことで自分を責める彩芽を制止するのもそうで、メンバーそれぞれの思いやりが見えてきます。
ゆきな・ほたる
努めていつも通り明るく振る舞おうとするゆきな、なんとかチームを盛り上げようとする先生をたしなめるほたる。ひなたもそうですが、ショックを受けているであろう鈴音心配します。あまり尺は割かれないものの12-4でチーム想いのところが見られます。
鈴音・月
月の元気が取り柄という自覚と役割の認識、鈴音の「無理しないで月ちゃんも休もう」……涙
ひなたと並んで胸を張って歩けるようにというのはひなたからの自立であり、もっと言えば前章の鈴音のようにチームのために行動するという意味があると思います。鈴音はそういう事が自然にできる月ちゃんにも、憧れがあるんじゃないかな…
メイ
8人で2_wEiにぶつからなければ勝利はないと拘り、焦ります。未来からやってきた彼女の将来の夢は他の7人と違って、職業ではなく「音楽に溢れた未来を作る」ことです。このチームが結成されたのと同じ理由・動機を持って音の杜学園に入学した人物でもある。一番シリアスな動機とも言え、ひなたを無理にでも説得する、何をしてでも勝とうとする理由があります。
ただひなたがステージに立つか否かはチームが必要とするかではなく、前章の内容のようにひなたの意思の問題なのです。メイ達に出来ることはあまり多くありません。
鈴音はメイにチームを信じようと諭します。ひなたが楽しく歌えるチームを守るのが今できることだと。信じるというのは、自分たちがこれまで積み重ねてきたものが再びひなたを呼び戻すと信じることでしょう。メイはひなたの歌声が録音されたメディアを先生に渡して待つことにします。
メイの心はその歌を聴いたことで宿ったものだと明らかになります。彼女もやはり、ひなたが音楽を楽しむ心を取り戻すのを願ったのでしょう。
この章では勝ちに焦る場面が多いメイですが、ライブ後には楽しさに感極まっていたり、やはり彼女も仲間が大切で、8人で歌うことが大好きでたまらないんですよね。
ソロ曲がまだ温存され、ひなたと同様物語の重要なキーになりそうなメイですが、この先一体何が起きるんでしょうね…
ひなた
無邪気に歌うことを楽しんでいた幼少期のエピソードが挿まれ、しかし今はライブバトルという戦いに苦悩している。チームにいる理由を見失い、声を失い、自分を責めます。
2_wEiはひなたに会いにきて、彼女らなりの答えとして、喪失を抱えながら生きていくしかないんだよと言います。でもひなたとは状況が違います。
すべては変わりゆく だが恐れるな、友よ 何も失われていない なんだよな〜。
先生はメイから渡された歌をひなたに聴かせ、楽しそうに歌うひなたが好きだと、歌うことが好きというだけでいいんだと言います。かっこいいぜ、先生…
自身の純粋な歌声を聴いて音楽は楽しいんだという気持ちを思い出しますが、彼女がここで思い出すのは8人が初めて集まった日のワクワクであり、8人でしかできない音楽を歌っていこうという思いなんですよね。
ライブバトルは本当にやりたいことではなかったことに気付いてしまったのが第11章でしたが、「8人で」歌うことが一番楽しい、大切なことなのだと確認することでチームに戻っていくことになります。そういう気持ちを伝えるためにチームのもとへ走ります。
彼女にはアイドルになるという夢もありますが、8人で歌える場所は音の杜学園にしかないのです。
8/pLanet!!
8人それぞれチームが大好きでメンバーを思いやるシーンが描かれてきて、ひなたが声と音楽を楽しむ心を取り戻した。8人で歌うことの意味が明確になった。ここにきてついに『8/pLanet!!』という現実世界での声優ユニットの名がゲーム中でも付けられることになります。「8人が出会った奇跡」という意味の名前を付けるにあたって、素晴らしい段取りなのではないでしょうか。
桜木ひなたと8/pLanet!!は、8人で歌うことの楽しさ、音楽の楽しさを人々やMotherに伝えるために歌い続けるんだと宣言しました。8/pLanet!!の音楽が一体どんなものなのか、はっきり言葉にされました。2_wEiはサイドストーリー第2章で、勝敗など関係なく2_wEiだけの絶望を歌うという境地に達した(それがライブバトルへの態度に表れている)のですが、8/pLanet!!もそこに追いついたという風に思います。
8人の音楽になにかの可能性を感じたのか、ひなたの思いが伝わったのか、2_wEiが試合放棄をしたことで両者に白黒が付けられるという結果もなくなり、本来たどるはずの敗北の歴史とは違う未来へと物語は進んでいくようです。メイは未来を変えられると信じて、第12章了。
雑感
初読時はひなた再起のストーリーというイメージに引っ張られすぎたのでしょう、2回目を読んでみるとこれは8/pLanet!!というチームのストーリーでもあると見方が少し変わりました。
アプリのサービス開始から3年以上、これまではゲーム中のユニットは厳密には「音の杜学園のチーム」みたいな言い方をするしかなかったのですが、8人個別のエピソードを経て、第12章でのこういう内容を踏まえて名前が付けられるという展開になりました。このやり方のなんと気が長く、納得感があり、カタルシスのあることか。
ストーリー解放のためにライブをこなしている中で『第10話 8/pLanet!!』というタイトルが画面に出た時の驚きといったらもうね。
そしてひなたソロ『Teardrop』リリースのゲーム内イベントを踏まえ、メロディを知った上で第7話で流れてくる鼻歌。こういう感動はリアルタイムで作品を転がして、リリースする・受け取る順番がコントロールされているからこそという部分もあり、ずっと追ってきてよかったと思わされます。めちゃめちゃおもしろいです。
彩芽・メイ・ひなた本人の心を動かした楽しそうな歌声というのも、何もストーリーだけで示されているのではなく楽曲の中でそう思わせる説得力があります。8/pLanet!!が8人揃った時のボーカルの響き・イメージも、今回示された方向と一致していると思います。ストーリーが進むにつれてそういう断片がパチパチと綺麗に組み合わさっていくような楽しさがあるんですよね。
5th Liveに向けて
『Teardrop』『Precious Notes』には「届けこの想い/メロディ」という象徴的なフレーズがあります。それが含む意味は多様だと思いますが、ひとつはここまで書いてきたような「音楽を楽しむ心」でしょう。『RapidRock』はそういう8/pLanet!!のイメージにぴったりな楽しいタッチの新曲です。
このストーリーの延長上に5th Liveを置いて考えると、そういうメッセージを誰かに伝えるライブになるのかなとぼんやり考えています。観客に、ストーリー上の存在としてのMotherに(そのMotherはどうにも異常を抱えていそうですが)。それがまた影響を与えて物語が続いていくのではないでしょうか。
仕上がってきた?僕はもう準備万端さ!
新章についてのツイートやブログ
紹介させていただきます。
ひなたの歌が未来でメイを救い、過去で彩芽を救い、そして現在の自分自身を救うという話の構成素晴らしいな
— あゆ (@ayu_ko_mimo) August 14, 2019