8 beat story♪と「想いを届ける」歌
やけにポエムなタイトルだなと思ったあなた。安心してほしい。本文はもっとポエムだから。
ことのはじまり
8 beat story♪ 8/pLanet!! 3rd Liveの翌日、2017年11月13日の夜。私は東京・有楽町のファミレスにいた。関西へ帰るバスを待ちながらフライドポテトか何かを食べ、前日に購入したアルバム『8』の歌詞カードを開いた。ライブの最後に披露され、アルバムにも収録されている新曲『Days』の歌詞にはこうあった。
「伝えたい想いも 言い出せなかったフレーズも この歌に込めて君まで届くかな」
すぐにこの歌詞が好きだと思った。同時にそれまで大事なことを見落としていたことに思い至った。歌に乗せて「想いを届ける」。これは今までも歌詞の中で何度も繰り返されてきた言葉ではないか。なぜ気付かなかったのだろう?
大切なことは形を変えながら繰り返されるものだ。エビストの場合、桜木ひなたの決め台詞は「届け!この想い」で、音ゲーをやっていればこれを日常的に聴くことになる。
この言葉の意味についてなんとか文章にしたかった。水瀬鈴音を主人公とする二次創作小説の構想が浮かび上がって書き始め、当然のごとく頓挫した。当然というのは私は凡そ創作行為を仕上げたことがないからだ。
4th Liveの日が迫りつつある。その日が来る前に、当初やろうとしたのとは別の形になるとしても書いて、伝えておきたい。
ということで、この文章は「届ける」「伝える」をキーワードにして、エビストが何を・どんな気持ちを届けようとしているのかを改めて考えるためのものだ。同時にエビストの作品性が何なのかを検討することにも繋がるだろう。
歌詞
「届ける」「伝える」、それに近い意味・状況の歌詞を挙げてみよう。
届けるものは元気、友情、感謝、恋心、願い、音楽愛…と曲によって様々だが、エビストの曲を貫いているキーワードだとわかるはずだ。
1. ファンタジア【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
歌え!銀河の果て 教室の隅っこ
届け!Song for you スマイル クレッシェンドしよう
今日も元気いっぱいに素敵な時間が訪れますように…
ブリッジ部分の歌詞。歌を通して笑顔を、元気を届けよう。なるほど力強い。
なんとなく聴き流しがちだったのだがそこは始まりの1曲、核心と言えるものが込められている。
2. BoyFriend【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
君が好きだよ 驚かせてごめんねって 私じゃダメなの?
こくはく 【告白】 かくしていた心の中を、打ち明けること。
3. 君はレモネード【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
走り出せ鼓動 もう我慢できない
今すぐ気持ち伝えるね お願い神様
恋の歌もやはり多いのだがこの曲のようなストレートさが特徴としてあるはずだ。
4. Distance【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
出口を探して彷徨える光 君のその胸へ届くように
時が流れて 僕が消えても 輝き続け 永遠に消えないで
5. BLUE MOON【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
君がいてくれるならば何も怖くなかった
僕らの空に浮かぶ青い月を見上げて
今なら言えるよ胸を張って
大好きだよ これからもずっとよろしくね
仲間やファンに向けたメッセージ。この曲について何かを書くことは難しい。
映像を見てほしい。これにはある種の真実が含まれていると思う。
【DVD視聴動画】8beatStory♪ 8/pLanet!! 2nd LIVE「2時間目の授業は…」 - YouTube
ゲーム内ストーリーでは水瀬鈴音が仲間を想って書いた曲として登場する。
6. あの日の約束【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
もう隣にはキミがいないけれど キミへ伝えたいことがあるんだよ
泣きたくてくじけそうな日もあるけど きっともう大丈夫だよ
This is NakaGo-Chi グッドメロディ
星宮ゆきなの境遇を表現したキャラソン的な曲だが、キャラソン的でありつつも受け取り方の幅はしっかり取られているという形はこの曲に限らない。
7. Shiny【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
手作りチョコレートをあげるよ
とびきり甘くとろける 世界はファンタジー
ハート型に込めたんだ 君への思いを
君への愛情を ギュッと詰め込んで はい、どうぞ?なんて
できたら簡単なのにね 伝えるのは難しい、、
8. それゆけ!!乙女のミッション!【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
ハレハレ アイヤイヤ 言葉がなくても伝わるわ
ハレハレ アイヤイヤ 心をひとつにするのだ
9. Tiny little letter【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
この手紙に込めた小さな願いが 君の心に届きますように
ずっと本当の気持ち伝えられなくて 遠くから君を見つめ続けていた
好きな声優に手紙を書くことは心身の健康に資するという研究結果が発表されています。
10. トキメキの15センチ【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
気づいちゃったドキドキ 背伸びをして 今からキミに届けるよ
どんなシチュエーションの歌詞なのかは社本悠さんのブログに詳しい。
11. Sugar Sugar Bee【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
君に君に 届けたい ハチミツみたいな気持ちを
まるで私 Sugar sugar Bee 受け止めてくれますか?
12. Go Live!!【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
本当は伝えたいことばかり 想いがあふれてくるよ
特別な special day この日のために頑張るの
僕の心全開 君に全部プレゼント
エビストにとっての「ライブ」がどんな場なのかを示していると言えるのでは。
13. Still...【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
もっと もっと大人になれたなら
君にちゃんと気持ち伝えられるかな
14. 全部、君のために【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
キミを困らせてみたくて ワザと涙ぐむフリした
キミを笑わせていたくて ワザと躓いたフリした
かわるがわる顔を出す 感情迷子の私
どちらも本当の姿 Ah 全部受け止めてね
15. Toi et Moi【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
今日こそ伝えたいなぁ
(想像しただけでもうバクバク)
(でも本当は少しだけワクワク)
想いを届けたいなぁ
もう少し そう…あと少し 君のところまで
デートを前にして。
16. 秘密の部屋の女の子【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
遠くてもずっと見つめてるよ 気持ちはずっと続いてく
この願い届け 心込めて 今君のもとへ
17. DREAMER【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
誰にも負けない気持ち(勇気を)
今伝えたい(ありがとう)
今ならキミのとなりで(歌うよ)
届けたいこの想いを
18. History【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
言葉にならないアツい気持ち
思い切り伝えたいなら クラシック音楽 奏でてみよう
君とならmusicの新たな扉 開けるような気がするよ
19. 三日月どりーむ【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
君にいつか伝えるよ Shalala 恋のメロディーを
20. Rooting for You【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
君が今まで 頑張ってきたこと 絶対に大きな力に変わるよ
いつもそばにいてくれてありがとう
僕たちからエールを送るよ You can shine
これは応援ソングですと言われると、時々受け取り方が難しいことがある。
聴き方を指定されるのが嫌なのかもしれないし、何を頑張るのだろうかと戸惑うのかもしれない。
ただ一貫したメッセージを発してきた中で、飾り気のない音楽で「エールを送るよ」と言われるとどこか説得力を感じて背筋が伸びるような思いがする。
結局大事なのは誰に言われるか。それもある。ともかく私はこの曲が好きだ。
21. ふわりあるたいむ【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
願い事は言葉にして 言えばきっと届くはずさ(叶えよう)
22. Twinkle Snow【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
あわ雪がふる Twinkle Snow Winter 恋する予感
ためらわずに 真っすぐな想いだけを 勇気出して そっと 伝えたい
踏み出せるよ Snow Sweet Season
23. ここから【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
一歩進んでみて怖くても 今日からは
ほら、勇気を出してみるよ
私の本当の気持ち聞いてくれますか?
24.サクラ涙
さよならが聞こえたら 二人はもう戻れない
願いはそう叶わない 届かないまま
異色の歌詞に思えたが、恋はいずれ終わりを迎えるということをエビストなりのリアリズムで描写するのがこの曲なのかもしれない。一方でこの恋を忘れまいという歌でもあり。
25. Days【8 beat Story】【8/pLanet!!】 - YouTube
伝えたい想いも 言い出せなかったフレーズも
この歌に込めて君まで届くかな
『ありがとう』っていう五文字は きっと魔法のコトバ
みんなに届くといいな 大切なour days
歌で想いを届けるという軸をぶれさせず、『ファンタジア』に戻ってきた感もある。
26. Despair【8 beat Story】【2_wEi】 - YouTube
I do know 'bout it.
Driven to despair!
届かないの 忘却の旋律の声は
アンドロイドの親玉であるMotherが生み出した2人組(2機?)2_wEiの曲。
人間とアンドロイドのパフォーマンスバトルという舞台にあって、人間の音楽の破壊者、8/pLanet!! の敵対者であることを明確にして、ストーリーを踏まえた歌詞になっている。
8beat story♪は、アンドロイドがパフォーマンスする音楽が隆盛を極めつつある中で、人間の音楽の未来を守ろうとする8人の女の子のレジスタンスの物語だ。
そこで現れる問い=人間の音楽の価値とは何か?に対する答えがこれまでに見てきたような「想いを届ける」楽曲に表現されているのではないか。特殊な舞台設定から何らかのテーマが浮かび上がる、SFとかでよく見るあれである。
まだシナリオは続くが、シナリオとそれに伴う楽曲の一致をここに見ることができるはずだ。
『Despair』まででエビストの楽曲は51を数えるが、かなり多くの曲で「届ける」「伝える」という言葉が使われていることがわかる。ここで挙げていないものにも率直・素直なメッセージを含んだ歌詞が見られることも注目したい(『Dive to the Future』など)
アプリのスタートから2年、関わる作曲者・作詞者が何人もいる中でも繰り返されてきたのが「届ける」「伝える」だ。向井秀徳は「繰り返される諸行無常 よみがえる性的衝動」というフレーズを何度も歌ってきた。これによく似た作品性が立ち現れる。
桜木ひなた
主人公のキャラ造形がその作品の性格を表していることはよくある。ということで、桜木ひなたという視点から「想いを届ける」について見てみよう。ややネタバレになるがご容赦いただきたい。
プロフィール画面。
しっかりここに「届け!この思い!」とあるし、なんなら音ゲー中にも叫んでくれる。
率直に言ってライブでのコールアンドレスポンスはなかなか癖の強いものが多いと思う。
音楽を愛し、人に元気や勇気を届けられるアイドルになることを夢見る高校2年の女の子だ。自分の夢を叶え、人間の音楽の未来を守るためにライブバトルに参加する。
何気ない私室の背景にテレビとDVD/Blu-ray再生機器(2031年の規格は不明である)があり、アイドル映像を見ているのだろうと想像される。
メンバー集めの最中、ライブバトルで勝てるチームを作らなければと思い詰める彩芽がひなたの楽しげな歌を偶然聴き、歌が好きだという気持ちが大切なのだと思い至る。
彼女自身が歌を楽しんでいることが伝わる…ストーリーの中で彼女の歌がどう受け取られているかを示すシーンだ。
彼女を理解するためのエピソードを挙げよう。昨夏にエビスト初のリーディングイベントがあった。 その台本にはこうある。
ひなた「……うん。ひなた、ひなたね、どうすればいいのか、わかった気がする。今は、公園で一人で歌ってた頃に比べたら、全然違う。でもね、えへへ……その……好きなんだ」
鈴音「……何が?」
ひなた「歌うことが!それは何も変わらないの!」
ひなた「えへへ……。歌うことが大好きだって胸を張って言いたいね」
鈴音「……うん♪」
ひなた「なんで歌うのかって、別に戦いたいからじゃないんだ。アンドロイドの歌う音楽も、嫌いなわけじゃないんだ。音楽は、みんなのものだから……。アンドロイドだけが歌う未来なんて、ズルいもん。それだけ。ひなただって、いっぱい、いーっぱい歌いたい!だからね、みんな。歌おう!」
この純粋さが8beat story♪なのだと言いたい。言っていいか?
いまストーリーでは、音楽を愛する気持ちを持ちながらも平凡な女の子でしかない彼女の価値がなんなのか問われようとしている。近い内に更新が来るだろう。2_wEi乱入が予告されているライブ前に合わせてきているのも意図がないとは考えられないのだが…。
おわりに、そして4th Live
以上のように「届ける」「伝える」という言葉を軸とした時に8 beat story♪がどう見えるかについて書いてきた。大変とっ散らかりそうなのでメインストーリーについては措くとするが、やはり相手を想う気持ちが伝わった時のドラマが印象に残るものになっている。
そしてライブについて。私がエビストに入れ込むようになった最大のきっかけは間違いなく恵比寿ガーデンルームの2ndだった。楽曲が持つ感情を大切にしたパフォーマンス、メンバーの真面目さ、そして熱量が「この先もついていこう」と思わせてくれた。今振り返ると、ライブでも作品のフィロソフィーが体現されていたのだ。3rdについては言わずもがなだ。
4thに向けての3rd Live Blu-rayリリイベでは、彼女達自らハードルを上げるようなことを言ってくれた。今回は凄い、本気でやるからお前達も本気で来いと。もはや頼もしい。
そんな一本筋の通ったエビストに少しでも興味を持ってもらいたい。素敵な作品だと思っている。しがないオタクの宣伝になってしまうが、私が届けたい想いはそういうことだ。
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Zepp Divercityに行こう。4th Liveは5月12日だ。