エビストについて書きます

8 beat story♪と8/planet!!+2_wEi

青野菜月さんの引退によせて 8beat story♪ 8/pLanet!!『歩み 2016~2018…』

 

1.

今年もJリーグのシーズンが終わった。12月。移籍市場が活発になり、クラブを去る選手、スパイクを脱ぐ選手がいる。キャリアの長い期間をひとつのクラブで過ごし、サポーターに愛されてきた選手の引退も聞かれた。サンフレッチェ広島森崎和幸浦和レッズ平川忠亮柏レイソル栗澤僚一FC東京梶山陽平

特に広島で生まれ、ユース時代から20年以上をサンフレッチェ広島一筋で過ごしてきた森崎和幸の引退は私にとっても重要な出来事だった。学生時代、広島に住んでいた時によく試合を見に行ったというわけではないが、たくさん思い出のある土地だから卒業して離れてからもサンフレッチェを応援してきて、それは習慣になった。

二度のJ2降格、幾度もの病による離脱(私などには想像も及ばない辛さだったろう)。それを乗り越えて果たした三度のJ1優勝。決して派手ではないがチームにバランスとリズムをもたらす理知的で正確なプレー。カズは私にとって最高のセントラルミッドフィールダーだ。

そんなカズの今季限りでの引退はシーズンの終わりが近づく10月に発表された。

 

同じ頃、一人の声優が12月をもって引退すると発表された。8beat story♪の橘彩芽役で8/pLanet!!のメンバーである青野菜月だ。2年半という時間…アプリのリリース直後から追い続けてきた8beat story♪のキャストとの別れは、私の大好きなサッカー選手の引退と重なって見えた。

そして2018128日に、現体制として最後のイベントが用意された。

 

「フロントと選手は通り過ぎる存在で、最後に残るのはディナモと俺達だけだ」とはクロアチアディナモ・ザグレブのサポーターの言葉だが、彼女の引退を知った時に思い浮かんだのがこの言葉だった。安易に使えるような背景から出てきた言葉ではないと理解しているつもりだが、それでもサポーターとクラブの関係を端的に表していることも事実だ。

青野さんが去って新しい橘彩芽役のキャストがやってくる。8beat story♪という物語は続いていく。キャストの交代は当然織り込み済みではなく、ましてやキャラクターとキャストの重なりを大事に作られてきた。声優とサッカー選手は違う。でも人がやっている事、時として別れが付き物であることに変わりはない。

去る人がいても物語は続いていく。それは当然のこととして理解している。しかし、だからといって別れが寂しくなくなるわけではないし、「なぜ」と思わなくなるわけでもない。そして、いずれ去っていくと知っていてもサポーターが選手を愛さないわけがない(もっとも、サッカー選手の移籍はしばしばサポーターとの確執を生むものでもあるが)。

 

青野さんとは結局ここまでお渡し会で話すことがないままになってしまって、直接言葉を交わせたのはごく短いハイタッチぐらいだった。それでも彼女の凛々しく澄んだ美しい歌声が、ライブでのキレと表現力を備えたパフォーマンスが、彼女が演じた橘彩芽というキャラクターが大好きだった。メタル大好きで、音楽の話をよくしてくれるところも。

 

8/pLanet!!の曲を聴いていると、青野さんの引退という背景が付け加えられたことでそれまでと違う聞こえ方がして冷静になれなかった。だからこのタイミングでライバルユニットである2_wEiのアルバムがリリースされてライブまであったのはちょうど良かったのかもしれない。2_wEiはライブの中で「会いたい人に今会いに行け、伝えたいことを今伝えろ」と話していた。

 

別れが寂しいことに変わりはないが、こういうイベントがきちんと用意されるのはファンとして幸福なことだと思った。サッカー選手だって引退セレモニーを用意されることは当たり前ではない。カズはサポーターの感謝と賞賛の中で引退のスピーチをして、背番号と同じ8回胴上げされた。青野さんもそんな風に送り出せるといいなと、自分でも驚くほどテンション高く関東に向かうバスに乗った。

期日が迫る中でなんとか青野さんと社本さんに手紙を書いた。でも、この2カ月、どれだけ真剣に彼女の引退と向き合って、どれだけ8人の気持ちを想像できただろうか。

 

 

2.

『歩み 2016~2018…』。8人のこれまでの活動を振り返り、これからの未来に繋げていくという意味が込められたタイトル。横浜で私が、私達が見たのは整理され演出されたショーなんかではない、もっと剥き出しの生々しい感情だった。

 

ライブのイントロBGMと一緒に8人のこれまでの写真お披露目のイベントからナンバリングライブは勿論、CD等のリリイベでの写真もモニターに映し出され開演となった。

彩芽と杏梨:青野さんと金魚さんが登場し、『おそろいさんぽ道』が流れる。4thライブ後にリリースされたから初披露だ。同じ3生コンビでも大人になっていく事への抵抗の歌である『Still…』とは対照的。2人の中学時代の幼い声色で歌われ、アレンジもメロディも素朴で純粋そのもの。8beat story♪だからこそできるような、大好きな曲だ。スピッツ的な雰囲気とか、モータウンビートを刻むベースから斉藤和義の『歩いて帰ろう』を思い浮かべる。ペンライトは忘れてきたが、心地よいリズムに合わせて踊った。間奏の『アルプス一万尺』みたいな手遊びの振り付けがかわいらしい。

2人は歌詞にある通りの「お揃いの髪型」で登場した。「いつでもわたしたちの心に響いている 胸が躍る可愛いメロディ/前髪が長く伸びてもずっと君と一緒ね」がお気に入りだ。

 

それから8人の自己紹介とコールアンドレスポンス。これもそれも、青野さんと過ごす時間はこれが最後だという事実があってどこか異様な空気があったという気がする。

そしてこれまでの歩みを映像とともに振り返る、4チームに分かれてのクイズコーナー。実は初出しとなる1stライブ昼の部のアンコール、バースデーソングをソウルフルに歌う社本さん、4thのリハーサルの日だろうかZeppBLACK SABBATHの公演情報を探す青野さんの映像などが流れた。過去のライブのセットリストを埋める難問などもあって、最終的に勝者はメイほたチーム(澤田さん・吉村さん)になった。ご褒美のケーキは後で8人で食べようねという話になったり、各チームでマイクオフで話して進行を聞いていなかったり、ハニプラの緩さが出ていて楽しく進んだ。

告知が2つ用意されていた。現在の8人で歌う最後の曲『つよがりDecember』の配信と4thライブのBD化決定。待ってましたとばかりにホールが揺れた。『DREAMER』のクラッカーが炸裂する瞬間は私にとってひとつのハイライト。その映像を見て胸が熱くなった。

 

朗読コーナーが続いた。去年夏はスケジュールの都合で和氣さんが参加できなかったため初のフルメンバーでの生朗読となる。8人が曇り空の下で満月を待ちながらこれまでのストーリーを振り返るという内容。メンバー集めの苦労、楽しかったこと、それぞれの困難、空乃かなで、2_wEiのこと。明るいことばかりではない。しかし、8人が不安に包まれた時、それを吹き飛ばすような、驚くほど美しく青い月をひなたが見つける。

最後に、遅れてやってきた「先生」を8人で呼ぶ。物語の中に私たちもいるのだと信じられるような呼び声。彩芽が先生に感謝を伝える。涙声だった。

 

青野さんと金魚さんの2人がステージに残って『Still…』が披露された。「残された時間は少しだけ」「もう少しだけ好きにさせてよ」。2人とも気迫があまりにも入り過ぎていて、大丈夫なのか、こんな歌があるかよとただ圧倒されるばかりだった。過去のライブと同じ曲だと思えなかった。

金魚さんはほとんど泣きながら歌っていた。ああなってまで無理に歌うことはないと思うくらいだった。しかしむしろ彼女たちにとってこそ歌う必要があったのではないか。

 

青野さんが彩芽への想いを語ってくれた。彼女の怖いもの苦手な部分に触れてくれたのが嬉しかった。彩芽を愛しながら演じてくれたことが伝わるスピーチだった。彩芽のことを考えても、青野さんには大きな葛藤があったに違いない。彼女はそういうことは言葉としては出さなかったけれど、そうだとしても決めた意思を尊敬するし、尊重したい。

それからソロ曲である『URARA』が初披露になった。『おそろいさんぽ道』にしても青野菜月の橘彩芽としてのやり残しは作らないとでも言いたげなセットリストで、でもそれが嬉しかった。彩芽と一緒に歌う青野さんはやっぱりめちゃめちゃ格好良くて、今日で最後なんだと思うと本当に卒業が惜しかった。

 

残る7人からそれぞれ手紙が読まれた。全部、素直すぎるくらい素直なメッセージだった。

まだ引退が信じられない。最後まで8人でやりたかった。8人でもっと大きい舞台に立ちたかった。練習の中で積極的にフォローに回ってくれたこと。役とパフォーマンスに関しての助言。いつもほたるが怒られていて「なんで」と思っていたこと。8人のことをいつも考えてくれていたこと。『Distance』の、夜空のような澄んだ歌声が好き(心の底から素晴らしい喩えだと思った)。社本さんがセンターとして引っ張れるようサポートしてくれたこと。2ndのアンコールでセンターとして挨拶するよう促してくれて嬉しかったこと。またご飯を食べに行こう、お酒を飲もう。今までありがとう。

舞台の裏側はあくまで裏側で、今まで知ることのなかった献身を知るにつけ、本当に橘彩芽みたいな人だなと思うばかりだった。7人を受け止める姿も彩芽みたいで、彼女の存在の大きさを感じさせられた。

いつ決まっていつメンバーに知らされたか私たちが知ることはない。何を思いながらこの日までを過ごしてきたのか。「私の大好きな8/pLanet!!に会いに来てください」という言葉は、どんな想いを経て出てきたのか。私たちより長い時間があった中でも心の整理を付けられないまま128日を迎えて、それでもしっかり青野さんを送り出そうとしていることは確かだった。私も整理して納得したつもりでいて、しかしあまりにも切実な想いを目にすると堪えきれなかった。そこかしこからすすり泣く声が聞こえていた。

 

最後は8人で『BLUE MOON』を歌った。「君がいてくれるならば 何も怖くなかった」「大好きだよ これからもどうぞよろしくね」。そうするのが相応しい気がして胸に拳を当てながら口ずさんだ。

これからも8beatstory♪と8/pLanet!!2_wEiをよろしくお願いしますと青野さんが最後に挨拶をする。手でL字を作って8の字を描き「8/pLanet!!でした」とステージを去っていく。終演。

 

 

3.

なんてイベントだったんだろう。参ったなとしか言いようがなかった。1週間ぐるぐると考えている。

イベントが始まるまでどのような内容でやるとも全く明かされず、座席ありだからトーク+ミニライブだろうなと考えていたけど、しっかり楽曲を見せるような気もしていた。実際、卒業や別れ、友情、絆がテーマの曲はいくつもあって今回の状況をそれを通した感動的なショーにしてしまう事もできたはずだった。でも自分の中には青野さんの卒業という事実をそういうものとして扱いたくない部分があって(あそこで曲を使って泣けと言われるのが嫌だったし、この先この別れという出来事ばかりが曲の中で強調される気がした)、披露された楽曲が「青野菜月の橘彩芽」を決算する最小限で構成されたことに安心したところがある。

できたはずだった、と言うよりもそうしたくなかった、できなかったのかもしれない。『Still…』を歌う金魚さんを、涙で言葉を詰まらせながら手紙を読むメンバーを見て「もっとライブ見たかったな」と言えるだろうか。

そういう姿も含めてショーだよ、と言われると反論できない。私たちはチケット代を払ってステージを見ている。でもあれをショーだとかドラマだとか資本主義だとか、あるいは感動とかエモいとか、簡単な言葉で片付けたくなかった。だから少しでも残しておきたくて文章にしているわけだが。

 

あれ以上歌わせられんと言いながらだが8人でステージに立って歌う場所が必要だった、もっと歌いたかっただろうことも確かでわけが分からない。

せめて、終演のアナウンスがあっても私を含めた観客が迷惑も承知で席を立たずアンコールを求めれば『ファンタジア』を最後に歌わせてあげられたのではないかと後悔じみた想いが浮かび上がる。やめてくれと言われるだろうが。ファン個人の力はあまりにも小さくどうにもならない事が多すぎるが、できるとしたら無理せずお金を落とすことと、声を上げることだ。先生として。 

 

4.

今回のイベントの意味ーー別れそれ自体は辛くて寂しいだけだーーは、最後に8人でステージに立って決算をすることと、青野菜月という人の存在を心に刻み付けるための手続きだったという気がしている。文章を書いているとそう思う。残る7人にとってもファンにとっても。

格好良く歌う青野さんを見ることができた。8/pLanet!!にとっての彼女の存在の大きさ、2年半を過ごしたチームとしての結びつきは、手紙と声を通して私たちに伝わった。それはファンに見えない場所で行われてもよかったのかもしれないが、私たちにとっても意味があった。道は違えども、これからも8/pLanet!!の中に青野さんが一緒にいると信じることができたのだから。そのためのセレモニーだったと言ってもいい。

だから今回のイベントが開催されたことは本当に感謝してもしきれない。

 

青野さんは多くのものを残してくれた。これまで過ごした時間、橘彩芽という人物、たくさんの歌。

Tiny Little Letter』メンバーに手紙を書くひと押しをくれる曲。『それゆけ!! 乙女のミッション!』エビストにのめり込んだひとつのきっかけ。『オーバードライブ』絶妙なボーカルとギターのバランス、そして最高難度の音ゲー。曲のことを書くときりがない。

 

URARA』の歌詞に「いざ言ノ葉と共に行こう」「歩めよ乙女 共に行こう」とある。去っていくあなたがそれを歌うのかと、後日聴きながら笑ってしまった。寂しくないとも別れの痛みがないとも言えないが、しかしこれほど相応しく心強い言葉もないなと思う。

先生と、新しくなる8/pLanet!!と、音の杜の仲間たちと、8beat story♪という物語と。そして、橘彩芽と青野菜月がこれからも共にあること。

そんなことを信じられる。8人にとってもそうだと嬉しい。

 

青野菜月さん、ありがとうございました。 

 

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君は2031年を体感したか。2_wEi 1st Live "Driven to Despair" 感想

2031年に行ってきたよというレポート。最高。

 

完全にミントが言うところの「人間の皆さん」にされてしまった 

 

 

 

コンテンツ・キャラクターのライブとして貫かれたコンセプト

今回のライブを一行で振り返るとそういう言い方になる。概ねの予想通り野村麻衣子・森下来奈の2人が2_wei:アルミ・ミントそのものだというスタンスを貫き、歌い演じきった。そのための演出も徹底しており、1部につき1時間と短い公演の中に8 beat story♪の作品性が凝縮されていた。

演出面の工夫が随所に見られ、コンテンツ型のライブとしての完成度が異常だったということで音楽よりもそっちを中心に思ったことを書いていく。

 

これまでのお膳立て

2_wEiは現状2年半続いているエビストで今年登場したばかりのユニット。それまでのエビストにはなかった非常に重いストーリーと『Despair』『UNPLUG』の2曲をひっさげて4th Liveに乱入、というあたりの話は過去の記事を読んでみてほしい。

今回についてもライブを前にして2人のストーリーが追加され、ゲームとライブの連動した展開が4th Liveに続いて示唆された。

nozzey19.hatenablog.com

 

nozzey19.hatenablog.com

 

ところでエビストは人工知能が制作する音楽が人間製の音楽を追いやりつつある2031年を舞台にしており、プレイヤーはバーチャル空間で架空の存在のアンドロイドとライブバトルをすることになっている。

バーチャルな存在でしかなかったアンドロイドだが2_wEiは現実空間に肉体を持った存在として生み出され、人間と同じようにテレビに出たりライブをしたりと猛威を振るっている。

つまり元々肉体を持たなかったものがリアルの体を持って現れる(ゲーム中)、架空のキャラクターがゲームから飛び出し担当声優の体を借りてライブをする(この現実世界)という2つが重なり合っているのが2_wEiというユニットだ。現在の2018年とエビストの舞台である2031年を交錯させる、凝った入れ子構造だ。

これを利用しながらキャラクターを演じきるステージを作り、ライブハウスにエビストの世界を召喚することが今回のひとつのコンセプトだったように思う。それはライブであってひとつのアトラクションのようでもある。本当に楽しかった。

開演前後のアナウンス

開演前に諸注意が読み上げられる。これが8/pLanet!!のライブならキャラクター声のアナウンスが入るところだが、まあ2_wEiはやるキャラじゃないし普通に会場の人がアナウンスしてるんだろうと思っていたら早くも仕掛けられている。

通常の諸注意に続き、ステージの両脇に立っている男性(ガタイがいい)がSotFインダストリーアンドロイドの親玉である「Mother」を所有し2_wEiを生産した企業のセキュリティで、あんまりマナーを守らないと彼らが締め出しに来るというアナウンス。なんてこった、もうここは2031年だ。そういえばこの音声自体もややノイズ混じりになっている。 

続いて2_wEiの原型となるボーカルソフトの生みの親虎牙優衣(CV:芹澤優)が会場に呼びかけてくる。2_wEiのストーリーの重要人物だ。彼女は劇中で既に亡き人となっている。僅かに残された人格データがサイバー空間を彷徨い、会場にハッキングでも仕掛けているとでもいうのか。

2人を破棄せざるを得ず親としての役割を果たせないまま逝ってしまった自責の念が語られる。そして、深い絶望の中にいる2人の歌を受け止め、2人を愛してほしいと言う。それが何かが変わるきっかけになるかもしれないと。

ゲーム中のストーリーの続きを見せるようなモノローグ。確認するがこれは開演前だ。かなりかっ飛ばしていると思う。しかし、話は知らない、読んでないけどとりあえず来たという人も何かを察したのではないか。

そんな訳でアルバム『Throne of Despair』のイントロが流れ、ステージ上にアルミとミントが登場する。

ところでハニプラ3rd 4thはバーチャル空間にダイブする映像演出があったが、今回はそれがなく、やはりこれまでとは違って現実空間で行うライブですという設定が反映されているのでは。

 

ライブ本編

ストーリーで触れられていたバンドセットは無し!しかし、夜の部終演の際に"Driven to Despair Final"と称してバンドセットを入れたライブ開催が告知された。ちなみにバンドメンバー(Dr:青山英樹 Ba:二家本亮介 Gt:山本陽介)もSotFインダストリーから派遣されるという設定になっていた。

 引退は撤回します

 
楽曲とパフォーマンス

『Despair』『UNPLUG』から始まってゲーム内発表順に5曲を披露、その後アルバム新曲を5曲。まだそう多くはない(といっても始動から1年だ)持ち曲を全て見せる約1時間のステージとなった。

8/pLanet!!と比べると2_wEiの振り付けは多くない。がっつり踊るよりもとにかく歌い上げるという見せ方になっている。しかし大きな身振り手振りや表情が確実に2_wEiの感情の激しさを表現している。観客を睨みつけ、煽り、時折悲痛な部分が顔を出す。

声優・野村麻衣子と森下来奈が入り込む余地は排除され、ストーリーの地続きとしてアルミとミントがステージに立っていることが頭ではなく感覚で理解できた。ステージ上の2人にはただならぬ説得力があった。

 

MC

2_wEiの全てを見せてやるからお前らも全力で来いという話だったり、危ないから前に寄せるなとか、グッズ紹介とか、お弁当の話。アドリブ的な部分もあっただろうが全部アルミ・ミントのままでやりきった。ちょっとした舞台演劇みたいだ。

終盤、『Numb』の前に悲しげなピアノインストをバックに長めのMC。やり残していることはないか。先延ばしにしているうちに大切な何かが大きく変わってしまうかもしれない。伝えたい想いは今伝えろ、会いたい人に今会いに行け。今を全力で生きろ、2_wEiもそうする。

これがもっと「声優ライブ」然としたイベントだったら印象は大きく違っていただろうと思う。

しかしここは今2031年で、ステージに立っているのは絶望と後悔のドラマを(しかも、現在進行形で)抱えた2体のアンドロイドなのだと思わせるように全てが機能していて、キャラクターを通して歌われる歌と言葉に重みが与えられていた。

最後は2人に残された「歌」への戸惑い混じりの愛を綴った疾走感ある楽曲『Pain - pain』を披露し(ちょっと泣いた)、あっさりと退場していく。

アンコールはなく、夜の部では上述のFinalの告知があって終演となる。

 

 

総括

・開演前からエビストの世界観を構築し、ライブ中はキャラクターがステージに立っているという前提を一切崩さない

・ライブが現在進行中のストーリーでの出来事として位置付けられている

・歌によって想いを伝えるというエビストのメインテーマ(それをキャラになりきって実践できる野村・森下のパフォーマンス力)

 

1公演約1時間と短いながらも非常に濃密で充実したイベントに感じられたのはだいたいこんな風に整理できるだろうか。

観客を2031年の人間、2_wEiの物語の目撃者にしてしまう力を持ったイベントだった。はっきり言うとエビスト史上最高だったかもしれない。

今後も物語と音楽が一体となった方向性でエビストは進んでいくのだろうし、8/pLanet!!にしても2_wEiの存在を踏まえてシリアスに歌と向き合ったものになっていくのかなと想像している。

 

ライブに行ったフォロワーからは特撮ヒーローショーみたいだったという感想も聞かれた。「2人の想いを受け止めてほしい」というアナウンスはなんならプリキュア映画で観客にライトを振るよう呼びかけるシーンを思い出した(実際ペンライトが振られている)

あるいは徹底してフィクションの世界を作り上げようとしている点でディズニーランド的なものを志向しているのかなと思ったりもする。ディズニーランド、修学旅行の1回しか行ったことないけど。女性声優じゃないから

 

  

その他感想 

感情もそれを表現する力も、その人が生きてきたその人だけの文脈も持っているとなると、2_wEiは完全に人間を食いに来てるユニットだなと思わされる。

空乃かなで編で意外にもあっさりと感情・自意識を持った(と思われる)アンドロイドが出てきてやや戸惑ったが完全に腑に落ちた。こんなんが出てきたら「じゃあもう歌う必要なんかないな」と思うのも全く無理はないからだ。

こうモロに機械と人間の境界がなくなってしまうSFってそんなに読んでない(読書体験が少ない)。『BEATLESSとか『戦闘妖精雪風』は完全に異質であることが前提だし。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は相当前に読んだきりで全く覚えてないけど人間の感情というアイデンティティの危機感でいうと近い気がする。

とはいえエビストは歌が最大のテーマのはずなので、桜木ひなた達がどう向き合って良い未来を切り開いていくのかを楽しみたい。

 

2人のジャケットの背中。デザインというよりマンガのように見えたけど内容までは読み取れない。

レーザーとかライトの演出。Numbの雨描写が曲と歌も相まってエモの2乗だった。

ミンちゃんの人間に対する優しさは少しながらも虎牙優衣ちゃんの愛を知っているからなのかな…

2034年から2031年にタイムスリップしてきた人結構いた。私も1stではそうでしたね。

バンドの前で声優やアイドルが歌うと最高というのがこの1年で得た経験なのでFinalへの期待感は高いし、これがあと4公演あることも嬉しい。

 

 

追記 大阪公演・東京Final公演について

単独の記事にするほどでもないので思い出しとメモをいくつか。

  • 12月大阪。8/pLanet!!よりも先に大阪でのライブイベントが開催されたことに驚いたが、2人体制という身軽さが実現させた部分もあるか。
  • アナウンス含む構成は11月と同じだが、MCに遊び心が見られる変更点があった。やはりアルミがミントの子供っぽい部分をバラす(新幹線を楽しむ様子、「イメージカラーだからグリーン車がよかった」)。関西弁でしゃべる。
  • Numb直前のMCも年末仕様。

  • 最前で見たところ2人とも脚が大変綺麗だった。
  • 後日、ミント・森下さん着用のコーチジャケットを買った。

 

  • 3月東京Final。生バンドということでバンメン推しのファンも来ていたのだろうか。
  • 出音のバランスがボーカルが埋もれずバンドもしっかり主張しており大変よかった気がする。
  • 虎牙優衣のナレーションがないことについて。ストーリーの更新時とそれぞれのライブ開催時で時系列が前後しているのかもしれないし、していないのかもしれない(幽霊のように漂っていたデータが3月には完全に消えた?)。
  • ただ4公演参加した後にナレーションがないのを見ると「なんかライブが始まった気がしない」「あるはずのものがない」感じがある。気付いたのは数日経ってからだが、彼女がもういないという喪失感や違和感を3回6公演の中で体験することになった。
  • 昼公演。大まかには先だっての東京・大阪公演と同じ。バンドのソロ回しと初披露Heroicが挿まれ、NumbのMCが削られた。
  • バンドメンバーもキャラクター化されるということは物語の登場人物であるということ。2031年の作り込みだ。
  • 序盤、アルミ・野村さんが噛んで勢いでやり通す場面があった。苦笑いが出ていたがそんなキャラクターの生っぽさは面白いと思う。

 

  • 夜公演。演出・セトリに大幅な変更。諸注意のアナウンスの際、SotFセキュリティ(いかつい)がステージ上に上がる(盛り上がる観客)。フロアに飛び降りて地面が揺れる(盛り上がる観客)。初の演出。
  • 初手Heroicで単なる昼の再演ではないとわかる。
  • BD化、11月に2ndワンマン開催発表。
  • 「2_wEiはいろんなものを失い奪われてきたけれど、絶対に奪われたくないものがある」「辛いことがあれば下を向いてもいい。後悔していることがあるなら振り返ればいい。でも、2_wEiの音楽を聴いている時だけは前を向かせてやる」
  • かっこよすぎる…
  • キャラクター、虚構であることをステージ上で貫くからこそ言葉に強度が出るし、それに説得力を持たせられるライブでもあった。
  • マイナスの感情を(単発の楽曲ではなく)ユニットの根幹に据える難しさがこの手のジャンルのものにはあると思うが2_wEiはひとつの鮮やかな回答を見せているのではないか。
  • UNPLUGで完全に突入してしまった。「消えない痛みも解き放てばいい」
  • 初のアンコール成立(Be alive、Despairの2曲)
  • アンコール後「野村麻衣子」と「森下来奈」が登場。「アルミさんとミントさんはもう帰っちゃった」。「1stライブを通してアルミ・ミントにも希望の光が見えたのではないか」「エビストはファンと一緒に作っていけるコンテンツです、これからもよろしくお願いします」と挨拶。
  • 物販のお姉さんにしっかり「2_wEi旅(ちゃび)1枚ください」と伝えられてよかったです。

 

 

2_wEi 1st Live "Driven to Despair" プレビュー

2_wEiとエビストにとって今回のライブはどのような意味があるのか整理しよう。

一行で言うとこれはきっと物語上重要なイベントで、現実世界まで巻き込んだ状況になっているという趣旨のことを原稿用紙7枚ぐらいの分量で書いたものになる。

 

  • “Driven to Despair”
  • ゲーム世界の拡張としてのライブ
  • ロールプレイング
  • バンド
  • 物語

 

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